広告を配信するうえで、マーケターやライターが遵守しなくてはならないのが「薬機法」と「景品表示法」です。
最近ではますます制限が厳しくなって、表現の幅が狭まっています。
ただ世の中にはブラックな広告代理店やアフィリエイターもいて、違反広告を垂れ流している輩も…。
ある日音楽を聞いていたところ、こんなところにも見つけてしまったんです。
超絶ド・ブラックな表現を…。
それが「aiko」さんの「カブトムシ」です。
今回はそんな「カブトムシ」の歌詞を、徹底的にクリーンな表現へと薬事対策していきます。
早速「カブトムシ」の歌詞を見ていきましょう!
悩んでる身体が熱くて 指先は凍えるほど冷たい
「どうした早く言ってしまえ」そう言われてもあたしは弱い
あなたが死んでしまって あたしもどんどん年老いて
想像つかないくらいよ そう今が何より大切で
スピード落としたメリーゴーランド 白馬のたてがみが揺れる
少し背の高いあなたの耳に寄せたおでこ
甘い匂いに誘われたあたしはカブトムシ
流れ星流れる 苦し嬉し胸の痛み 生涯忘れることはないでしょう
どうですか?
aikoさん、やっちゃってますね。
悩んでる身体が熱くて 指先は凍えるほど冷たい
最初から完全にブラックですよ、これ。
「悩んでる身体が熱い」「指先は凍えるほど冷たい」
はい、終わりです。高年期障害系のサプリとかでも本当に出てくる、典型的なブラック表現ですよね。
薬機法でとにかく気をつけた方がいいのが、効果効能を謳う表現。
それから「指先」とか、実際の身体の部位を指す表現も避けた方が良いですよね。
このような表現を薬事対策する際のポイントは、ストレートな内容ではなく、それを想起させる具体的なシーンに置き換えること。
ということで、こうなります。
悩んでる身体が熱くて 指先は凍えるほど冷たい
あたしだけハンカチが手放せなくて
冬なのにブランケットも手放せないよ
どうですか?
完全に更年期障害系サプリのクリーン表現に置き換わりましたね。
ちなみにaikoらしく「あたし」としているのがポイントです。
さて、続けていきましょう。
どうした早く言ってしまえ そう言われてもあたしは弱い
ここはいいですね。
aikoさん、ここは非常に良いですよ。非常にぼんやりしてると思います。
薬事対策のコツは、とにかく断定的で効果効能を謳った表現をしないこと。
非常に抽象的でぼんやりしていると思います。
あなたが死んでしまって あたしもどんどん年老いて
これはダメですね。
実際に「死ぬ」なんていう表現を広告で見たことはありませんが、あまりにも不安を煽りすぎています。
こういうネガティブなフレーズを置き換える際のポイントは、和らげつつ、ポジティブな表現へと変換することです。
こうなります。
あなたが死んでしまって あたしもどんどん年老いて
あなたがハツラツといられるように
あたしもエイジングケア※1が必要になって※1 年齢に応じたケアのこと
ちなみに「エイジングケア」には注釈が必要なので、しっかりと「年齢に応じたケアのこと」と加えておきましょう。
さてこの次なんですが、aikoさん非常に素晴らしいです。
スピード落としたメリーゴーランド 白馬のたてがみが揺れる
高年期障害は40歳くらいを境に「エストロゲン」という女性ホルモンが減少していくことが原因の一つとされています。
「スピード落としたメリーゴーランド」というのは、非常にそれを抽象的に表せていますよね。
さらに「白馬のたてがみが揺れる」の部分も、自分の頭髪が徐々に白髪になっていく過程を表現しているように聞こえてきます。
薬事対策バッチリ、お手本のような周りくどい表現で素晴らしい。
ただ最後、最後なんです。
aikoさん、気を抜いてしまいましたね…。
流れ星流れる 苦し嬉し胸の痛み
ここにきてド直球の表現…!!
具体的な身体の部位に対して、痛みという直球のフレーズ。
最後にこれを薬事的に言い換えるとすれば、こう。
流れ星流れる 苦し嬉し胸の痛み
椅子から立ち上がる ドキドキする
こちらもネガティブな表現を緩和しつつ、具体的なワンシーンの表現へと置き換えました。
こうして完成した「カブトムシ/aiko」の薬事対策verがこちらです!
あたしだけハンカチが手放せなくて
冬なのにブランケットも手放せないよ
「どうした早く言ってしまえ」そう言われてもあたしは弱い
あなたがハツラツといられるように
あたしもエイジングケア※1が必要になって※1 年齢に応じたケアのこと
想像つかないくらいよ そう今が何より大切で
スピード落としたメリーゴーランド 白馬のたてがみが揺れる
少し背の高いあなたの耳に寄せたおでこ
甘い匂いに誘われたあたしはカブトムシ
椅子から立ち上がる ドキドキする
どうでしょうか?
消費者に誤解を招くことのない、クリーンな表現になりましたね。
バカみたいだなと思われることでしょう。
なんて周りくどい表現なんだと思われることでしょう。
しかし、実際に広告クリエイティブの現場で起きていることはこういうことなんですよね。
ちょっと馬鹿らしいぐらいぼんやりさせないといけない。
肩身の狭い思いをしている我々ですが、何より大切なのは消費者が守られること。
最大の悪は、法をかいくぐって(ときには真っ向から法を破って)ブラックな表現を行う一部のマーケター・ライターです。
消費者・クライアント様を第一に、これからもクリーンな表現をつとめることで、ささやかな抵抗をしていこうと思います。
今回の薬事対策をもっと詳しくご覧になりたい方は、ぜひ下記の動画をチェックしてみてください!